教育理念

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【1】名大法科大学院の理念・目的

 
 

●幅広い教養と優れた専門能力を備えた法曹の養成

  21世紀の社会は、多様な価値観を持った人々が豊かで安全な生活を送ることができ、国際的にも開かれた自由な共生社会でなければなりません。そこでは、社会の様々な問題について、合理的で透明なチャンネルを通して、すべての人々が納得のいく、法的に明確な解決が図られることが必要とされます。このような法化社会においてこれを支え推進するのは、豊かな人間性と感受性に裏打ちされ、幅広い教養と優れた法的専門能力を備えた法曹です。本法科大学院の第1の教育の理念・目的は、こうした法曹を養成する点にあります。


●広い視野と国際的関心を持つ法曹の養成

 自由な共生社会は、国際的にも強く相互に依存しており、そこで活躍する法曹には幅広い国際的な視野と専門的知識が強く期待されています。我が国の経済活動は、欧米のみならず、とりわけ最近ではアジア近隣諸国と強い絆で結ばれています。これらのアジア諸国は将来巨大な市場として発達する無限の可能性を秘めているにもかかわらず、我が国の法曹界にはこれらに対する関心が必ずしも大きいとはいえない状況にあります。しかし今後は、欧米に限らずより広い国際的な関心を持った法曹の養成が求められるはずです。本法科大学院の第2の教育の理念・目的は、こうした法曹を養成する点にあります。
 

●多方面で活躍できるバランスの取れた法曹の養成

 名古屋大学が位置する中部地区においても、環境問題、高齢者を中心とした福祉問題、消費者問題、行政活動に関係した問題など、市民生活に関連した多様な問題が発生しています。こうした市民が直面する様々な問題をきめ細かく拾い上げ法的に解決するためには、市民生活に関連する分野について広範な知識を有するホームドクター的な法曹が必要とされます。一方で中部地区は、自動車産業をはじめとする巨大な製造業の企業群を擁し、様々な企業活動に伴う法務のエキスパートを必要としており、国内外で活躍しうる能力を持った法曹が強く要求されています。本法科大学院の第3の教育の理念・目的は、とりわけ中部日本における基幹大学として、企業法務に強く、そしてホームドクターとしてのサービスも十分にできる、バランスの取れた法曹を養成する点にあります。

【2】 ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)

 名古屋大学法科大学院の設定したカリキュラムに沿った教育を、所定の年限にわたって受け、必要修得単位を含む所定の単位を修得した学生に、法務博士(専門職)の学位を授与します。
 カリキュラムは、名古屋大学法科大学院の3つの教育理念に従い、以下の(1)~(3)の法曹を育成するよう編成されています。学位授与に際しては、(1)のための資質・能力を中心に修得しつつ、(2)又は(3)のための資質・能力をも修得していることを重視します。法曹養成の中核機関としての法科大学院の位置づけから、学位を得た者は、これらの資質・能力を活かして司法試験に合格し、実務法曹等の法律専門職として活躍することが想定されています。
(1) 自由な共生社会・法化社会を支える、豊かな人間性と感受性に裏打ちされ、幅広い教養と優れた法的専門能力を備えた法曹
(2) 欧米のみならずアジア諸国などにも幅広く国際的な関心を持ち、専門的知識を有する法曹
(3) 中部地区の特性に応じ、企業法務に強く、そしてホームドクターとしてのサービスも十分にできる、バランスの取れた法曹

【3】養成される法曹の特色

 上に述べたような理念に基づく教育により、具体的には、次のような特色をもった法曹が養成されるものと考えています。

 
●国際社会の中で積極的に活動することのできる法曹

 一般に国際社会というと、伝統的にはビジネスの点でつながりの強かった欧米を指していることが多かったといえます。名古屋大学法科大学院での法曹養成は、この分野を重視しながらも、さらにアジアの諸国の法律政治について関心と基礎的能力を有する法曹を養成します。これまでの交流協定や法整備支援事業の経験を活かし、渉外法務を担当する法曹の育成に留まらず、アジア地域での法整備事業にかかわる法曹の育成をも目指しています。

 
●企業法務に強い法曹

 名古屋大学法学研究科は、これまでも、トヨタ法務会議から派遣される連携教員の協力を得て、中部地区の企業法務と連携を図り、研究体制を整備するとともに、インターンシップ等を通じて社会連携の成果を法学教育に活かしてきました。これらの経験をもとに、法科大学院でも中部地区の企業法務との連携をさらに強化し、企業法務に強い法曹の養成を図ります。
 

●市民生活上の法律問題に関して専門知識を有する法曹

 名古屋大学法学研究科には、非政府組織の活動や消費者問題等、様々な市民組織と協力した教育活動を行ってきた経験と実績があります。これらの経験と蓄積を生かし、市民生活上、より重要性を増す高齢化問題、福祉問題、環境問題、消費者保護に関する問題などに通暁した法曹を育成します。

 
●情報・IT技術に強い法曹

 情報化の進展に伴う法的諸問題について正確な知識を習得し、情報化技術の発展の意味と社会の情報化の本質を理解するだけでなく、情報機器やネットワークを利用して、収集した法情報を分析・要約・整理・統合・加工し、さまざまな資料や各種の文書を作成する技能を身につけた法曹の育成を目指します。