HOME > 研究概要 >研究経過(中間報告 [2007年5月])
各国の民事訴訟制度を巡る基本的な法情報は十分に交換されておらず、国際的なビジネス訴訟に関して起こりうる、外国での訴訟手続などに関して必要な基本情報が極めて不足している。このような状況はわが国において顕著であり,わずかにアメリカ合衆国などの情報が比較的多く得られているに過ぎない。特にヨーロッパ諸国の法情報は極めて不足している。このような状況は、諸外国でも必ずしも十分な状況にはなく、その法情報の偏在は著しい。このような現況に鑑みて、本プロジェクトでは、これに参加している各国の民事訴訟法を中心とする専門家の人的ネットワークを基礎に、各国の民事裁判に関する基本情報を収集分析することが極めて有意義であると考えられる。そこで、従来わが国で十分な情報が獲得されていない諸国の民事裁判に関する基本情報を収集することにした。当面の対象は、イギリス、フィンランド、イタリア、ハンガリー、フランスなどである。これまで数度、これらの諸国の専門家を交えたワーキング・グループを組織し、おおむね以下のような項目について、それぞれの国で300頁程度の英文で作成された民事裁判の概説書を作成することとし、その準備を急いでいる。内容はほぼ以下の通りの共通項目を明示している。
このうち既にイギリスに関しては、既に原稿が完成しており、現在出版の準備を進めている。
このような形で、研究者の人的なネットワークを通じて恒常的なシンポジウムと共にワーキング・グループでの研究を通じて、各国民事訴訟制度の様々な違いが各国の長い歴史に裏打ちされたものであることが明らかとなる。このような現在の状況を十分に理解するためには、単に形式的比較では不十分である。その歴史的基礎を明らかにすることで、今日の法制のより十分な理解が可能になる。ヨーロッパにおける急速な法発展も、長い歴史に支えられたものであり、広い観点からの歴史的基礎の解明が不可欠であるようにみえる。人的ネットワークを形成し、異なった法伝統による法制度についての情報の交換は極めて豊穣な比較法的知見と相互理解をもたらすことが明らかとなった。恒常的な対論によりこのような観点からの新たな分析が不可欠である。
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