Nagoya University Freiburg, Germany

国際的ビジネス紛争の法的解決の実効性を高めるための新たなフレームワークの構築

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研究の目的

ビジネス紛争を巡る今日の問題

今日わが国では、社会生活の全般にわたって急速にグローバリゼイションが進行すると共に、特に<法化>の現象が急速に浸透しつつある。このために、従来はほとんど裁判所における紛争解決の対象とはなり得なかった大企業の紛争も、裁判所に持ち込まれ、裁判所の判断が求められるようになっている。また、これらの紛争はその多くが国際的な広がりをもちはじめており、その紛争を解決するためには単に国内的な法制の整備・研究のみでは不十分である。これらの紛争解決のためには迅速・正確に様々な諸国の法的情報を獲得するとともに、わが国の法制度についても国際的観点かも透明性を高めなければならない。これらの法情報は国際的に相互に交換されて、ビジネス紛争を訴訟で解決するためにもその実効性を高める必要がある。特にこれらに必要な法的情報は刻々と変化し進展しているが、それらをアクチュアルな形で迅速に交換し、分析するための方法や体制は、わが国だけでなく国際的にもいまだ十分に確立していない。特に、国際的な民事訴訟手続は今日各国の裁判制度の違いなどが大きな阻害要因になって、その利用はきわめて困難である。そこで、国際的なビジネス紛争の解決の実効性を高めるためには、各国の訴訟制度を中心とした法的情報をできるだけ包括的な視点から迅速に交換・分析することが必要である。従来外国の法的情報の獲得は、各法分野で個別的・散発的に、各法分野の研究者の個人的関心に基づいて行われてきたにすぎず極めて偏派であり、今日大きな課題となっている国際的ビジネス紛争の実効的解決にはほど遠い。新たな、研究の体制と方法とが求められている。

本研究費による達成目標

本研究は、特に国際的なビジネス紛争の実効的な解決のために必要な国際的な情報交換のシステムを構築し、特に急速に変化する社会の実情に応じた比較法の方法を探ろうとする試みである。もっともこのような目標はきわめて大きく、また新たな方法の開発を必要とし、一朝一夕に実現できるものではない。そこで、本研究は、このような最終目標を達成するための準備的・方法論的な研究と、システム構築の可能性を探り、その試行的なシステムの運用を試み、将来的に実現に努めたい恒常的システム構築のための準備をしようとするものである。

本研究の特色

本研究では、ビジネス紛争の実効性向上について、特に民事手続制度を中心に据えて紛争解決制度の実効性に関する研究システムを構想し、紛争解決に必要な情報の共有化を確立するための研究を行う。具体的には、
(1)研究の中心を、民事訴訟を初めとした民事手続制度に的を絞り、これを中核にしながらビジネス紛争の実体に関する法情報や紛争の実体を明らかにし、その比較法的分析をすすめる。
(2)ビジネス紛争解決に関する様々な情報の獲得・交換のためには、様々な国の法制が複雑に入り交じり、またEUの動向と関連して重要であるヨーロッパ諸国の最新の情報を交換するために、ヨーロッパにおける情報収集拠点をドイツ・フライブルク市に設ける。わが国からの直接かつ包括的な情報獲得が必ずしも容易でないからである。この拠点では、フライブルク大学の協力者の援助を得て、ヨーロッパにおける各国の状況を常に探り、各国の協力者と常に連携しつつ情報の交換をおこなう。

本研究の位置づけ

国際的なビジネス紛争の実効性を確保するための方策は、本来ビジネス社会が常に進展しそれに併せて各国の法制も常に進展するものであることから、最新の情報の獲得と正確な分析が継続して行われなければならない。このような研究体制はわが国の研究者のみで行うことには限界がある。むしろ、このような情報の収集・分析は国際的な専門家・研究者の人的ネットワークによる共同体制で行うことが肝要である。本研究は、このような研究のためのネットワークを構築し、試行的な研究を行うことを目的としている。

本研究の予想される成果

本研究では、第一にビジネス紛争を解決するために必要な様々な法情報を、国際的な規模で交換するための人的ネットワークを築く。この結果として、これまでわが国では外国の法情報の獲得手段が確立しておらず、研究者の限られた関心により、特定の国の特定の分野の極めて限定された法情報の獲得が行われたにすぎない現状を打破し、より包括的な法情報を、迅速に獲得・交換する人的なネットワークを確立し、恒常的なものにする。その結果、比較法研究についても、従来の静止的な方法を見直し、よりアクチュアルな方法を模索する。

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