2005年度(平成17年度)入学試験第2次選抜試験(小論文試験)


  次の文章は、ある裁判官の著作からの抜粋である。これを読んで、あとの問に答えなさい。

【文章省略】

○文章は、中村治朗『裁判の客観性をめぐって』(1970年・有斐閣)より以下の部分を抜粋した。

70頁後ろから5行目「裁判が、……」〜72頁3行目「……にほかならない。」

74頁11行目「右のような試みは、……」〜75頁5行目「……紹介したいと思う。」
(うち、74頁12行目「自然法の再生も……」〜同頁13行目「……興味をひかない。」の部分は省略)

79頁2行目「価値判断の……」〜83頁4行目「……とどめたい。」(うち、79頁3行目「さきにも述べたように、……」〜同頁4行目「……要求される。」の部分は省略)

84頁後ろから9行目「テオドール・フィーヴェク……」〜86頁4行目「……できるのである。」



○抜粋箇所中、71頁6行目「未解決の問題」に下線を付した。

○70頁後ろから2行目「リアリズム法学」に注1)、71頁5行目「概念法学」に注2)、
81頁6〜7行目「ザイン」に注3)、同頁7行目「ゾルレン」に注4)を付加した。
また、72頁3行目「リガリティ」に英語表記「(legality)」を付加した。


(出典)
中村治朗『裁判の客観性をめぐって』(1970年・有斐閣)より抜粋。問題文とするにあたり、縦書きを横書きに改め、原文にある見出しと注のほか一部の文章を省略した。また、必要な箇所に注を付加し、一部のカタカナ表記の外来語に括弧書きで原語を付記した。

(語注)
1)リアリズム法学:1930年代にアメリカに登場した法思想で、ネオリアリズムとも呼ばれる。法の現実を直視し、法の不安定性、不明確性等について問題を提起した。
2)概念法学:19世紀のドイツ私法学が、抽象的原則で構成される法秩序の全体は無欠缺(むけんけつ)で、これから論理的操作により具体的事件の解決が導き出されるとして、精密・完全な概念・体系の整備と論理的操作を偏重し、目的論的な考慮を軽視する傾向にあったのを批判してイェーリングが作った言葉。法解釈学における形式論理偏重の態度を批判的に呼ぶときに用いられる。

3)ザイン:(独)sein 存在。

4)ゾルレン:(独)sollen 当為。「あること」(存在)に対して、理想として「まさにあるべきこと」。

[1)、2)は、法令用語研究会編『有斐閣法律用語辞典[第2版]』(2000年・有斐閣)、3)、4)は、新村出編『広辞苑[第5版]』(1998年・岩波書店)をもとにした。]


問1 
問題文中の下線部にいう「未解決の問題」を論じることにはどのような意義があると考えられるか。「未解決の問題」とは何かを明らかにしたうえで、400字以内で論じなさい。 

問2 
問題文中の下線部にいう「未解決の問題」にとって、「ディアレクティク」という推論方式はどのような意義を有すると考えられるか。800字以上1200字以内で論じなさい。